もう一人の芸術家

長年使っていた教室のピアノ。どうも調子が悪いなあと思いつつも、調律をお願いしてもイマイチよくならない…。友人からとても腕の良い方を紹介して頂き、ピアノの状態を見ていただきました。……想像以上に散々でして。調律どころか、修理に(T^T)
アクション部分を抜かれてカラッポになってしまったピアノ。なんか悲しいです。ピアノの修理が終わったと連絡があり、本日納品とともに、8時間の調整。すっごく楽しみ。見積もりに来てくださった時も勉強になったので、今回はお邪魔かもしれないけれどもこの長丁場をべったり張り付きで拝見するつもり。

分解されたアクションは、組み立てだけでも時間がかかる。ピアノの壊れっぷりと直してもらいっぷりは、荒木さんご自身のブログでご確認いただくとして。

http://arakipiano.blog43.fc2.com/blog-entry-377.html

いろんなお話を聞かせていただきました。イタリアでの修行時代のこと、松尾楽器の調律師のこと、メーカーによるピアノの違い、そしてもちろん、ピアノの構造について。しかし何より興味深かったのは、人とピアノとの関わりについて。荒木さんは、ピアノを通してその先にいる「弾く人」のことまで見据えてピアノにかかわっておられます。ご自身の肩書きを「調律師」ではなく「技術者」と名乗られているのは、ただの音合わせに終わらない確かな技術を持っているという自信であり、ピアノのメンテナンスというと「調律」だけと考えがちなユーザーの意識を変えようというお気持ちがあるのではないかと思ったりします。それくらい、広い視野を持って1台1台のピアノと真正面から向き合っておられます。荒木さんの人となりやお仕事っぷりはやはり荒木さんご本人のブログをご参照ください。夜中に読むのはやめておいた方がいいです。夜が明けます。

http://arakipiano.blog43.fc2.com/

さて。お話しの途中で、気になったので訊いてみました。「どうしてうたまくらでお仕事をなさっているんですか?」お返事は秘密です。なんとなく。秘密ですが、うたまくらのHPを見れば何となくわかると思います。うたまくらのHPはこちらです。

http://www.utamakura.co.jp/piano/pianotop.html

荒木さんがおっしゃった言葉の中で、心に響いたのは「啓蒙」という単語。そして、一番心に残っているのは、私の「荒木さんの技術を是非伝えていってください」という言葉に対するこたえ。

「僕の技術のすべては伝えられないです。修理するための作業については伝えられるかもしれないですけど、その作業すべてを通してどのようなピアノに仕上げるかというのは、その人の感性にかかってくる事ですから」

返事ができませんでした。「ああ、この人は一流の芸術家なんだ」と、やっと気がつきました。一見機械的に見える、恐ろしく細かく手のかかる作業の一つ一つの間、きっと荒木さんには、そのピアノを仕上げた時に鳴る音が聴こえているんだろうな。演奏者だけが芸術家じゃないんですね。

荒木さんのすごいところは、ただ直すだけではないこと。そう、「啓蒙」。そうやって修理してピアノをよりよく使うための。そこまで考えて一人一人、大切にお付き合いなさっているのです。

おかげさまでピアノは今までの状態が嘘のよう。まるで別人になったかのように素晴らしい音が鳴り、とても弾きやすく、「爽快感がある」とまで言えます。

荒木さんはレクチャーなどもなさっています。

http://www.utamakura.co.jp/piano/jidai/jidai2.html

ご興味のある方は是非。ちなみにこの記事を書いているのは9月22日です。もう記憶がかなり薄れているので荒木さんの台詞などは原文ママではありません。

荒木さん、なんかください(笑)

もう一人の芸術家” に対して2件のコメントがあります。

  1. araki より:

    こんなに宣伝していただいて、恐縮です。
    作業のには腰を痛めていて、それも心配して下さりありがとうございました。今は全く大丈夫です。
    近々来ていただけるのですよね。
    うたまくらピアノ工房を堪能していってください。

    楽しみにしています。

    それにしても素晴らしい記憶力。
    自分が何を話していたか忘れてました。

  2. なおこ より:

    その節は本当にありがとうございました。
    うたまくら工房はいつか襲撃せねばと思っていたのですが、こんなに早く実現するとは。私の記憶力が良いのではなくて、荒木さんのお話が「すっげー! マジかっけー!」だったんです。またそのお話が聞くのが、本当に楽しみです。
    今後ともよろしくお願い申し上げます。

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