笑顔の魔法

ハイドン:ピアノソナタ31番 Hob.XVI-46番

ショボショボとした気持ちで練習して、ああでもないこうでもないと思っては進まず…レッスンの準備をして、ある日のレッスン。

「せんせい、『さよなら、おもち』とかいうの、して…」お母さんから「先生にお願いがあるんやろ、自分で言いなさい」と言われて、モジモジと一言。ああ! わかったよ! ♪「さよならあんころもちまたきなこ」パクッ! 覚えた? もっかい! ♪「さよならあんころもち」…あ、すごくギューッと手を握るね…♪「またきなこ、パクっ」…お! 手を離さなかったね? そっかあ、ニギニギしたかったのね!! 「また来てね」しっかりお顔を見て、もっかい手を握って。「さようなら」笑顔。

「上着着ないと、寒いよ」お母さんに言われても、初めてもらったピアノの本を持ったその手は離せない。そっか、今までテキストがなかったもんね。夜のお星様の絵、きらきらぼしの歌、乗り物の歌、いろんなものが書いてあるの、一緒に見ていたところだったね。「コート着る間だけ、先生が預かっておいてあげる!」やっと手を離してコートを着て…でも視線はピアノの本にロック。「はい」大急ぎで本を受け取り、胸に抱きしめて。「さようなら」笑顔。

「この前の演奏を録音したの、聴いてくれますか?」定演の? わあ、聴かせてくれるの? どやった? 「結構うまくいった」なに。それは聴かせてくれなきゃ。…本当だ、今まで聴いた中で一番良い。素直でまっすぐな演奏。いいなあ、こういうの。 「いいやん!」「ホントですか?」私、レッスンの最中にお世辞を言ったり嘘をついたりしないよ。これからの1年、すごく楽しみ。「ありがとうございました!さようなら!」笑顔。

本日のレッスン終了。すんごいピアノ弾きたくなったんですけど。バッハ。飾り気のない、シンプルなもの。

弾きながら思い出す、今日の笑顔。伝わる繋がる広がる、キモチ。握った手の暖かさ、信じる心。

ハイドン弾いてみよ。1楽章は、何となく決まりつつある。弾きながら考える、先生がおっしゃった「優しさ」。古典物の時に、必ず言われる…特に2楽章。なんか今、すごく穏やかな気持ちやで。なんやろ、2楽章弾いてみよ。

弾きながら思い出す、笑顔、ココロ。短調の響きは、反対に…ココロが枯れるような。なんか、わかんないけど、「優しさ」。こういうことかなあ…? ああ、これは違う。もっとこう、こんな…

わっ! 違う曲になったみたい! 2楽章、3楽章も「私が」目指す方向は見えた…ような気がする。 バラバラだった楽章が1つにまとまって曲になり…そうな、イメージ。

「もっとなんていうのかな、自分ていうもの、あるやろ?」そやった。先生もそうおっしゃってた。間違っててもいいわ。これでいってみよ。

んで、ニヤーッとイヤーな感じで、笑お。うし。えがお。

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