即興連弾
年中さんの女の子。突然、ピアノの一番低い「ラ」と「シ」の音を交互にダーンダーンと大音量で弾き始めた。「ラーシーラーシーラーシーラーシー…」テンポのキープが上手くできてるぞ。これはかなり集中している様子…止めたって止まらないだろうなと思っていたら、彼女の中でイメージがわいてきたらしく、お話が始まった。「怪獣がきたぞ~かいじゅうは、おおきくて、つよいんだー」「ラーシーラーシーラーシーラーシー」おお、弾き語り! でもテンポがそんなに乱れない。すごいなあ。「かいじゅうは、こわいんだー、みんなのことを、ふみつけてしまうぞー」「ラーシーラーシーラーシーラーシー」そんな調子で続けていて、しばらくすると、語りをやめ、何とだんだんディミヌエンドしながら、リタルダンドを始めた。「ラーシーラーシーラー…シー…ラー……シー……ラー………」すっごく上手! 教えてもなかなかこれはできないぞ! 「ああ怖かった。怪獣、やっとどっかに行ったなあ」とせんせいが話しかけると同時にまた「ラーシーラーシーラーシー」と怪獣登場! うへ~そろそろ止めないと。
「かいじゅうが、またきたぞー、つよいんだぞー、ネズミだって、たべちゃうぞー」お、そう来ましたか。「ネズミさんだよっ」高音で適当にトリルを弾くせんせい。「ネズミさんは、動きが速いよっ」どんどん場所を変えて弾く。語りはやめて、ラーシーラーシーを続けながら私の動きを見ている生徒。しかし高音だと音量で勝てない…「ネズミさんが、食べられちゃうよ~こわいよ~」と言いながら最高音のところまで上がり、ペダルを踏んで一気にグリッサンドで下行して、低音でバーン!と弾いて「ああ、ネズミさんが食べられちゃった」。と、即興連弾は無事おしまい。間髪いれずに「さ、この曲しよっか」と普通の調子で語りかけ、レッスン再開。うまくいって良かった。
多分、リトミックを勉強してなかったら自分がネズミ役になって即興連弾しようなんて思いつかなかっただろうなぁ。別にこれはリトミックではないけれど。それにしても、幼児の想像力、内に秘めてる音楽性って物凄いんだなあと思い知らされました。ちゃんと「怪獣が遠くに行った」というのを、「ピアノでどうすれば表現できるか」と教えられなくてもできちゃうんだもん。型にはめこんだ教え方じゃいけない。ううーん今日は勉強させていただきました。