オーバーホールの理由
昨日旅立ちました、ヤマハグランドピアノC5。そもそもなんで、オーバーホールなの?
ピアノは数え切れないほどたくさんの部品でできています。木や鉄、動物の毛など自然のものでできた部品は摩擦や衝撃で消耗していきます。鉄であれば、サビます。わかりやすい例だと、鉄でできた弦が切れやすくなってきて、切れるたびに張り替えていてはとても追いつかない…こうなると「弦張替え」の修理の時期になります。
ピアノは、弦を木でできたハンマーで叩いて発音します。このハンマーの先をおおっているフェルトも使用していくに従い、変化してきます。
白い部分がフェルトですが、弦を打つ部分に溝ができています。
弦溝が深く、硬くなると、音もかたくなります。フェルトを削って調整するのですが、何度も削ると木の芯に近づきすぎてしまいます。C5はすでに限界に近くなっていました。飛び出しているハンマーの弦にあたるところ付近が、平らになっているのが見えるでしょうか。その内側の真ん中が木なので、もう柔らかくなりません。こうなると、ハンマーの取替えの時期です。
弦の取替え、ハンマーの取替えは、それぞれ違う時期にしても良いし、消耗の激しい部分だけを取替えることも可能です。C5も、よく使う中高音域だけ先に取り替える選択肢もありました。しかし、すべて一斉に行ったほうがバランスが取りやすく、音色も安定しやすいのだそうで、一気に行うオーバーホールをお願いする事にしました。
他にも、こんなところの取替えをお願いしました。
ヤマハのこのタイプの鍵盤の場合、これは端の部分が黄ばんだのではありません。端の部分の影になっているようなところが本来の色なのです。真ん中の部分が白くなっているのは、打鍵するときの摩擦で削れたから。さわってみると、ほんの少し、くぼんだようになっています。画像ではわかりにくいですが、黒鍵も角がとれて丸くなっていますし、鍵盤と鍵盤の隙間も不均一で、横にゆらすと少しガタツキがあります。
色さえ気にしなければ鍵盤はまだ使えますが、この際です! 白鍵も黒鍵もお取替えお願いしちゃいました。
表に見える「消耗」は、こんなところでしょうか。中身を見るともっといろんなところがお年を召しています。
だけどね。私が一番気になっていたのは「音」。こーれーはー………説明し難いです。
オーバーホールによって音がどう変化するのか、これはまだわかりません。本当に楽しみです。
最後に。
「なぜ、同等品を買い替えるのではなく、オーバーホールなのか。」
ピアノは同じシリーズの製品でも、個体差が大きいです。同じものでも当たりかハズレか、買って弾き込んでみないとわからない。私が買うときも、3台弾き比べて選びました。それくらい、違うものなのです。
オーバーホールなら、好みを知ってくださっている技術者さんが、私の好みや使用環境、音場に合わせて作り上げてくださいます。今よりも良くなることが確実なのです。信頼できる技術者さんと知り合えたこと、それもオーバーホールを選択した理由でもあります。
6月から、新しく生まれ変わったグランドピアノでレッスンします。それまでは、作業工程に立ち会えれば、ブログでお知らせします。
普段と違う、なれない環境でのレッスンになりますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
楽器に限りませんが、同じ設計のものではなく、“その娘”じゃなければならない理由っていっぱいあります。仕上がり後の音が楽しみですね!
>う様
ウチのコが「ずばぬけて良い個体」かというと、そうでもなくてごくフツー、一般的だと思います。
でも、ウチのコがいい、と思うのは情かなあ?
はい、仕上がりが楽しみです!